ドリーム小説
「けほっ」
室内に僕の咳が響く。
風邪を、ひいた。
朝起きたら熱があって、体がだるかった。
完璧に風邪の症状だった。
薬を飲んで、そして寝る。
でも、なかなか眠れなかった。
留三郎は用具委員の子たちと一緒に町に行っているから部屋がうるさいというわけではない。
ただ、のことが気になる。
だから眠れない。
今日は休日で、結構前からと一緒に町に行こうねと約束していた。
なのに、風邪をひいた。
僕ってホント、不運だなぁ。
久しぶりにと出かけるはずだった。
前行ったのいつだっけ。
結構前のはず。
そういえばあの時は仙蔵たちに見つかったんだよな・・・・・・。
やっぱり僕って不運だ。
あー。、怒ってるかなぁ。
嫌われてたらどうしよう。
いやだなぁ。
、ごめんね。
心の中でつぶやく。
に、あいたいな。
でも、会っちゃだめだ。
風邪がうつったら、大変だ。
でも、会いたいよ。

「―――――

かすれた声で大好きな人の名前を言う。
会いたい。

「なぁに?」

戸の向こうから、の声がした。
熱のせいで幻聴まで聞こえるようになったのかなぁ。
これは、そうとうやばいのかもしれない。
戸が、スーッと開く。
「大丈夫?伊作」
そこには、桶を持っているが立っていた。
?」
僕は重い体を無理やり起こして、彼女の名前を呼ぶ。
「ああっ!!だめだよ伊作。寝てなさい」
は座って桶を置き、僕の肩を掴んで布団に倒す。
「・・・・・・・・・・・・どうして」
「看病しに来たの」
水の入っている桶の中に手ぬぐいを入れて、絞る
「ほら、留君用具の子たちと町行ったでしょ?だから」
そしては僕の額にかかった髪をかきあげて、手ぬぐいを置いた。
「でも、うつったら・・・・・・げほっ」
「ほら、無理して喋らないの」
そういっては僕の髪にそっと触れた。
「大丈夫よ。うつったとしても、伊作が看病してくれるでしょ?」
可愛らしく微笑む
僕もつられて頬が緩む。
「伊作。伊作のことだからさ、きっと今日町に行けなくて私が怒ってるって思ってるでしょ」
僕の首に手を当てる
多分熱を計ってるんだろう。
「・・・・・・・・・・・・・・・・どうして・・・・・・」
「あ、図星?」
「うん・・・・・・」
僕が返事をすると、は嬉しそうに笑った。
「伊作、私怒ってないよ。どんなに注意してても風邪ひいちゃう時あるもん。
 それにね、」
は、優しく頬んで、続けた。
「私は伊作と一緒にいられればそれでいいんだよ。
 だからね、町に行けなくたって私は平気。
 こうやって、伊作と一緒にいられるだけで私は幸せだよ」
・・・・・・・・・・僕、げほっ」
のことばに、返そうと思ったのに、咳が、そうさせてくれない。
「無理しないの。もう寝なさい。風邪治ってからちゃんと聞くから。ね?」
「うん、そうするよ」
僕はの言うことに素直に従って目を閉じた。
「おやすみなさい、伊作」
おやすみ
そう答えたいのに、なぜか急激な眠気が襲ってくる。
おやすみ、

僕も、と一緒にいられるだけで幸せだよ。