ドリーム小説


ガッ。

留三郎が金槌でアヒルさんボートを叩いた。

金槌を持つ手に勢いがあったのか、見事アヒルさんボートは壊れてしまった。

私はとりあえずそれを見なかったことにして、先ほど言った言葉をもう一度彼に言う。

「他に好きな人ができたの。別れよう」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、わかった」

彼は意外とすんなりと言った。

え、まさか本気と思ってるんじゃ・・・・・・。

とりあえず、様子でも見てみますか。

私が立ち去り、物陰に隠れて彼の様子を見ていると、彼は一体何を思ったのか、修理していたアヒルさんボートを思いっきり蹴った。

ええええええええええ何やってるのあの人!?

ああああああアヒルさんボートがどんどん無残な姿になっていくよ!!

ひぃいっ!!怖っ!!原形留めてるのあと頭しか残ってないじゃん!!

彼はそのアヒルさんボートの頭を手に取り、思いっきり投げた。

ええ、そりゃぁ思いっきり。

アヒルさんボートの頭はとてもいい音を立てて大木に当たり、そして割れた。

怖い。

アヒルさんボートの頭が割れてるよ。

かるくホラーだよ。

と、留さん、あんた一体何がしたいんですか・・・・・・。

「チッ・・・・・・」

留三郎は舌打ちをするとドカッとその場に座り込む。

「・・・・・・誰だよ、好きな奴って・・・・・・・・・・」

なっ!?もしかしてあの言葉本気にしてたの!?

やばいやばいやばい!!

アヒルさんボートがめちゃくちゃになったのに(修復不可能)実は嘘でしたーなんて言えないよ!!

ああああああでも私他に好きな人なんていないよ!!

「と、留三郎・・・・・・」

物陰からゆっくりと出て、彼の元へ行く。

彼は私を見て一瞬驚いて、目を伏せて言った。

「何の用だ」

その言葉の中には、今頃何の用だよボケェェェェエエエエといった様な意味までこもっている気がする。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっと、非常に言いにくいんですが・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・嘘、です」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

「いや、だから、他に好きな人ができたっての、嘘です」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

留三郎は大きく目を見開いて、口をパクパクさせて私の事を見る。

「ご、ごめんなさい・・・・・・今日、エイプリルフールだから・・・・・・」

「っ・・・・・・・・・・」

ガクッと留三郎が地面に膝をつく。

orz状態というやつだ。

「嘘かよ・・・・・・・・・・驚いた・・・・・・」

「ご、ごめんね・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「私、留三郎以外に好きな人なんていないから」

「いたらそいつ殺す」

怖っ。

「・・・・・・本気かと思ったじゃねぇか」

「ごめんなさい・・・・・・」

「思わずアヒルさんボート壊しちまったし・・・・・・」

「す、すみませんっ・・・・・・」

アヒルさんボート様!!ごめんなさい!!呪わないで!!

、俺以外に好きな奴はいないんだよな」

「あ、あたりまえでしょ!!」

「なら、一緒に吉野先生に怒られような」

ニコリ、と用具スマイル。

「ええ、勿論」

一緒に怒られよう。

それで、一緒に笑おう。

今日の事を一緒に笑い飛ばそう。

嘘を付くのもほどほどに、ね。