ドリーム小説 「いってきます」

彼独特のほんわかとした声を聞いたのはもう随分と前のことだ。
彼が忍術学園に行ってから結構な時間がたった。

斉藤タカ丸

私の恋仲だ。
彼が突然忍術学園に編入すると私に言い、そして彼はそれからすぐに忍術学園に向かった。
別れのあいさつなんてちゃんとできなかった。
勿論心の整理なんてできなかった。
どうしていきなり?
何で今まで言ってくれなかったの?
タカ丸のお父さんに後から聞いた話によると、タカ丸は最後の最後まで行くことを悩んだらしい。
理由は、私と離れ離れになってしまうから。
でも結局彼は行った。
定期的に送られてくる手紙。
でも、会いたい。
タカ丸に会いたい。
タカ丸の声を聞きたい。
でもそれは無理な事だってわかってるから、私は信じてる。
いつも手紙の最後に書かれているタカ丸の言葉を。



絶対に戻ってくるからそれまで待っててね。
他の男の所に行ったりしないでよ。
卒業したら結婚してください。



「え?」
届いた手紙を読む。
忍術学園はもうすぐ休みになって、町に帰れる。
そう、書かれていた。
タカ丸に、会える。
タカ丸の声が聞ける。
嬉しくて嬉しくて、何度も手紙を読みかえす。
いつから休みなのかな。
早く帰ってこないかな。
おかえりって言おう。
きっとタカ丸はいつものほんわかとした声で言ってくれるんだ。



「ただいま、



そう、こんな風に・・・・・・。
え?
振り向くとそこに、



「タカ丸?」



沢山思い描いていた人が立っていた。
「うん。ただいま」
彼はにっこりと笑って再度言う。
「―――――タカ丸っ!!」
タカ丸への思いがどんどんと溢れてきて、結局おかえりとは言えないまま彼に飛びついて私はわんわん泣いた。
終始タカ丸は私の髪をずっと撫でていてくれていて、その大きな手に私は安心する。

彼はずっと私の名前を呼んでいてくれた。
やっと会えたタカ丸。
毎日のように夢に見たタカ丸。
「大好きだよ」
その声に私は安心する。