ドリーム小説 夜中にひとりでアヒルさんボートを修理しているとがいつの間にかいた。
「大変だねぇ、用具委員長は」
「ああ」
だったら手伝えよという言葉は呑み込む。
「下級生をこんな遅くまで残すわけにいかないからな」
「お優しい先輩ですこと。文次郎とは大違い」
「あいつと一緒にするな」
「はいはい」
は俺の隣に腰掛ける。
「ねーしょくまん」
「食満だ」
入学してから何度このやり取りをしただろうか。
一年の時、初めて会ったやつらは全員俺のことを“しょくまん”と呼んだ。
だが、次からはちゃんと“けま”と呼んだ。
だけど、は違った。
何度も何度も訂正するが、はずっと俺のことを“しょくまん”と呼ぶ。
絶対覚えているのにしょくまんと呼び続ける。
最近では訂正するのも面倒くさくなってきたが、それだとに負けてしまったようで腹が立つから訂正する。
「しょくまんしょくまんしょくまん」
「食満だ」
「いいじゃんしょくまんで」
いいわけあるか。
「しょくまんって、よくしんべヱに食パンって勘違いされるんだよねー」
「・・・・・・・・・・・・・・」
無視することにした。
俺は目の前の作業に没頭するふりをする。
「しょくまん?」
無視。
「おーい」
無視。
の呼びかけをずっと無視していると、立ち上がる
やっと帰るか。
これで作業に集中できる。
金槌を握る手に力を込めた。





「留三郎」





ガンッ
アヒルさんボートを思いっきり金槌でたたいてしまった。
「あーあ。板割れてるよ留三郎」
からかう様なの声。
「名前呼んだだけでそんなに動揺しないでよ」
「・・・・・・今まで散々間違った苗字で呼ばれてていきなり名前で呼ばれたら誰だって動揺する」
「じゃぁ、顔が赤いのは何故?暗闇でもわかるくらい真っ赤だよ」
「なっ・・・・・・」
金槌を持っていない方の手で顔を覆う。
「私、留三郎のこと好きだよ。一人の男としてね」
あっさりと言う
まるで、明日の実習って何やるんだっけー、というように軽く。
「留三郎も私のこと、好きなんでしょ?」
「何言って・・・・・・」
「わかってんだからね」
なぜ、知ってる。
への気持ちは誰にも言ったことがないのに、なぜ。
「ねぇ、どうなの?私のこと好きなの?それとも私の勘違い?」
勘違いなんかじゃない。
昔からのことが好きだ。
だけど、好きだと口に出すのが恥ずかしい。










「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・










恥ずかしさをこらえて名前で呼ぶ。





「ありがと、留三郎」





はそれだけで分かってくれて、俺の名前を優しく呼んだ。