ドリーム小説
1
「ふぅ・・・・・・・」
木刀を持つ右手をおろして、左手で額の汗をぬぐう。
本日の修行終了。
今日も沢山いい汗かいた。
私は木刀を既に竹刀が入っている袋に入れた。
彼女は。
高校一年だ。
ぱっとみただの女子高生に見えるが、実はただの女子高生じゃない。
は、格闘オタクなのだ。
なぜか幼少期から格闘が好きで、剣道二段、柔道二段、空手一段、合気道黒帯というつわものだ。
それと、友人の影響を受けてか、漫画も好きだ。
漫画の中にいる強いキャラクターと戦ってみたいと思っている。
しかし実際にそれは無理だとわかっているので(わかっていなかったら怖いが)、現実にいる強い人間相手に、勝負を挑む。
が、毎回毎回の勝利。
彼女はいつか自分より強い人物に会えると信じて日々の修行を怠らないのだ。
毎日の修行内容は
・学校から帰ったら習い事(剣道・柔道・空手・合気道のどれか)の時間が始まるまでひたすら走る。
・習い事が終わったら近所の神社に行き、習い事の復習。
・神社にある森の中をランニング。
・剣道・柔道・空手・合気道のどれかを日替わりで練習。
だ。
今日は剣道だったので竹刀と木刀を持ってきていた。
ちなみに土日は山にこもって野宿。
どれだけ修行するつもりだ。
「さてと」
汗をぬぐったタオルをカバンの中にしまい、財布から五円玉を取り出す。
「いつものいつもの」
賽銭箱に向かって歩く。
いつもの、とは神様にお祈りすること。
毎日この場を借りているのでお礼も込めて、だ。
チリン、と、五円玉を入れて私は両手を合わせた。
「明日も無事に過ごせますように」
毎日同じことを祈る。
健康第一だ。
一礼をして、背を向け歩き出す。
が、ひらめいた。
何がって?
それは・・・・・・・・
「神様!!」
財布から五百円玉を取り出し、賽銭箱に入れる。
奮発だ。
「どうか強い人物に会わせてください!!!
というかぶっちゃけ強い人がいる世界に行きたいです!!」
毎日毎日同じこと言うから、ちょっと変えてみた。
「・・・・・・・なんちゃって。
強い人には会わせてくれるかもしれないけど、
強い人がいる世界に行きたいってのは無理あるよね」
ようするに異次元。
大丈夫か私の頭。
でもさ、
「行きたいんだよなー。強い人がいる世界」
友達から借りた漫画を見ていっつもわくわくしていた。
私もこの人と戦ってみたい。
私もこの人と同じような冒険がしたい。
「無理だっつの」
カバンを持つ手に力をこめ、下を向き、地面に転がっていた石を蹴り飛ばす。
―――――よかろう。かなえてやろう、そなたの願い。
ん?
今何か声が聞こえたぞ。
―――――私だ。今そなたが私に願っただろう。強い人物に会いたい、と。
「えぇぇぇぇぇえええ!!!???
ってことは、かかかかかかかかか神様!?」
―――――ああ、そうだ。
「ままままままままままままじですかい!!!!!」
、どうやら神様とコンタクトがとれたようです。
―――――今からそなたの願いをかなえてやる。
「ホントですか!?」
―――――ああ。いつも五円玉しか入れないそなたが五百円玉を入れたのだからな。
「・・・・ああ、そうですか」
ちょっとしょんぼり。
お金につられたわけね神様。
―――――安心せい。そなたの願いはかなえてやる。神は嘘などつかないからな。
「はぁそうですか。ありがとうございます」
―――――何だその有難味のない言葉は。
「あああ、えっとすみません」
―――――まぁよい。一度かなえてやると言ったからにはかなえてやる。
なぜなら神は嘘などつかないからな。フハハハハハハハハハ。
うっわー。この神様、自分に酔ってるよ。高笑いしてるよ。
―――――戯れもこのくらいにしておいて、さっそくかなえるか。
「わ!ありがとうございます!!」
やったー!!これで明日強い人に会える!!
もしかしたら今すぐにかも!!
―――――異次元への扉よ開け!!
・・・・・・・・え?
異次元?
―――――さぁ、行ってくるがいい!!そなたが望んだ強い人物がいる世界へと!!
そっちの願いですか神様!!
冗談だったのに!!
どうしよう、取り消すべきだろうか。
いやでもそんなことしたら絶対怒るよこの自分に酔ってる神様は。
ってうわぁぁぁぁあああ!!!
なんか目の前にでっかい大きな黒い穴が!!!
すすすすすす吸い込まれる!!!!!
―――――あちらの世界でも元気でな。
「あちらってどちら!?」
私の叫び声はブラックホールっぽいものに私とともに吸い込まれた。