ドリーム小説


「あれ、今日は雷蔵の顔じゃないんだ」



廊下ですれ違った際、言われる。

いや、すれ違ったわけじゃない。

すれ違うように計算していただけの事。

はいつも俺の変装をあっさりと見破ってしまう。

彼女をだましたことなんて一度もない。

今だって兵助に変装したのにやっぱり見破られた。

をだますために、俺は何度も彼女に絡んだ。

気が付いたら、好きになっていた。



「なぁに?雷蔵と喧嘩でもしたの?」

「いや、違うよ」

「じゃぁまた私の事、だまそうとしたの?」

「ああ。何では引っかからないんだよ」

「さぁ、何ででしょうね」

クスクスと笑う

そのちょっとした動作だけでも愛おしい。

「そんなに俺の変装下手?」

「ううん、完璧」

「なら何で引っかからないんだ」

「そんなの簡単よ」

兵助に変装した俺の顔をチョンと人差指でつついては笑った。



「好きな人の変装を見破るのなんて簡単よ」



思考回路が停止する頭。

熱くなる体。

え、今、なんて。



「それじゃぁね、私先生に呼ばれてるから」

駆けだすを、俺は呼びとめる。

「なぁに?」

振り向き、は言う。

「今の言葉、期待してもいいのか」

「ええ、勿論」

笑い、は再び駈け出す。

やばいやばいやばい。

嬉しくて今にも死にそうだ。