ドリーム小説




あ、今日も豆腐定食を食べている。

昼食時、食堂。
私の手には豆腐定食。
そして私の視線の先には一人のくのたま。
彼女の手には豆腐定食。







それが彼女の名前。
くのたま五年生だ。
にんたま五年生の間じゃ可愛い事で有名らしいが、生憎私はそんな事知らなかったし、そもそも興味がなかった。
豆腐定食を持っていた。
ただそれだけ。





ある日たまたま豆腐定食を注文している所が目に入った。
気が付いたら彼女の事を見かけるたびに目で追っていた。

あ、今日は豆腐定食じゃないや。

あ、今日は豆腐定食だ。

わかったのは、彼女が二日に一回は昼食で豆腐定食を注文するという事。





なぜ彼女の事を目で追うのか疑問に思い、八に聞いたらそれは恋だと言われた。
なぜか私はムキになって違うと否定した。
ただ豆腐好きの人がいて嬉しいだけだ。恋なんかじゃない。
そう八に言ったら笑われた。

仲間意識かよ。
ああそうだよ。
なら何で話しかけないんだよ。
何で話しかける必要がある。
豆腐好きな奴と豆腐の話したら楽しいんじゃないのか?
・・・・・・・・・・・・。
話しかけられないって事は恋してるって事じゃないのか?
違う。
なら次さんが豆腐定食注文してたら話しかけろよ。
・・・・・・わかった。
そうすれば自分の気持ちに気付くからさ。

八は笑った。





とん、と背中を押される。
八だ。
八はニヤニヤしながら彼女の事を見る。
ああ、話しかけろという事か。
話しかけられなかったら恋してる。
恋じゃないって証明するか。
私は彼女の元へ向かった。





「ここ、いい?」
「うんいいよ」
私は彼女の前に座る。
さんだっけ」
「うん。久々知兵助君だよね、豆腐好きの」
「うん、よろしく」
「こちらこそ」
ふんわりと笑う彼女。
その笑顔は可愛いとは思うが、別に好きという感情は湧きあがってこない。
ほら、恋なんかじゃない。
「よく豆腐定食食べてるけど、豆腐好きなの?」
私が質問すると彼女は答えた。
「うん、大好き」
途端顔が熱くなる。
いや、顔だけじゃない。
身体全体が。
やばい。
やばいやばいやばいやばいやばい。
私、の事が好きになったかもしれない。