ドリーム小説
「元気だしなよ団蔵」
「大丈夫。気持ち絶対伝わったから」
「そうだよ団蔵」
「心配すんなって」
「だからそんなに落ち込むなよ」



夜。
六年は組全員が俺と虎若の部屋に集まっているのでとても狭い。
だけど俺はそんなの気にしないで皆の中心で体育座りをしてめそめそ泣いていた。
皆はと言うと、やっぱり狭いのを気にしておらず、俺のことを慰めようと必死になっていた。

何故俺は泣いているのか。
それは、



「まだふられたって決まったんじゃないんだから泣かないで!!」



告白したんだ。
それも言葉を交わしたことがない人に。



相手は、
くのたま六年生。
五年の頃からちょっと気になり始めて、いつの間にか目で追うようになっていた。
そして、好きになっていた。
一度も喋ったことがないのに。



なのに俺は告白した。




一人で歩いているのを見かけたんだ。
と、昔誰かに言われた言葉を思い出した。



ちょっと勇気を出すだけで、いい事が訪れるんだよ。



気が付いたら彼女の名前を呼んでいて
そして、言った。



「好きです」



と。
言った後に後悔。
ななななななな何で俺はいきなり告白!?
あまりにも恥ずかしくなって、俺はその場から逃げだした。



「団蔵、元気出せよ」
「だってだってだって・・・・・・さん『はぁ?こいつ何なんだよ?キモッ』って絶対思ってるよ」
「大丈夫だって。さんそんな奴じゃねぇよ」
ポンポンと俺の頭をきり丸が叩いた。
図書委員長のきり丸はさんと少しだけ面識がある。
さんはよく図書室を利用するからだ。
それで自然と話すようになったと。
羨ましい・・・・・・・・・・。



「俺絶対嫌われたよ・・・・・・」
「いや、それはないと思うけど・・・・・・」
「だって話したこともない奴にいきなり告られたんだよ?
 気持ちがられてるって」
あー。自分で言ってて悲しくなってきた。



「あ、」
と、いきなり庄左ヱ門が声を上げる。
「ん?どうした?」
「そう言えば学園長先生に呼ばれてるんだった」
そう言って庄左ヱ門が部屋から出て行く。
「あ、トイペ補充しないと」
「そういえば虫食い本の修理しないと」
「あ、そうだったね」
「いそげいそげ。これ以上虫に食われないように」
「あー。吉野先生にアヒルさんボートの修理頼まれてたね」
「だったね!!急がないと怒られちゃう!!」
「あ、明日の実習準備あるんだった。塹壕掘らないと」
「その実習で使う火薬の確認しないと」
「他の学年が首実検するんだった。綺麗にしとかないと」
なんだなんだなんだ?
皆慌てて部屋から出ていったぞ。
ちくしょう・・・・・・。
心に深い傷を負った友達より委員会活動かよ・・・・・・。
もういい。
不貞寝してやる。
押し入れにしまってある布団を取り出そうと立ち上がる。



「加藤君」



ふいに、頭上から声。
「え?」
天井を見上げると、天井板がずれて、ひとつの顔が現れる。



だった。



「こんばんは」
彼女はとっても可愛らしい笑顔を浮かべて言った。
「話、してもいいかな?」
「え、あ、うん」
俺の返事を聞くと、さんはストンと降りてきて、座った。
「さっきは返事しなくてごめんね」
「あー、いや、俺もいきなりで、ごめんなさい」
かかかかかかかか、顔が合わせにくい。
「しかも逃げちゃって・・・・・・」
うわぁぁぁぁああ、思い出しただけで恥ずかしい!!
「ごめん。俺変だよね。話した事もないのにいきなり告白して、それで逃げ出すんだから・・・・・・」
あ゛ー。なんでこんなチキンなんだよ俺。
「ううん、加藤君は変じゃないよ」
「え?」
変じゃない?
何で?
だっていきなり告白したんだよ?
「最初はね、びっくりした。話した事ない人にいきなり告白されて」
でもね、
さんは続ける。
「嬉しかった」
「え?」
嬉しい?
どうして?
話した事ない人に告白されたのに?
「・・・・・・何で?」
「だって、自分に好意を持ってくれてるんだよ。
 嬉しいに決まってるじゃん」
そう言って、さんはふんわりと笑う。
「今度の休み、一緒に町に行こうよ」
「え?」
「お互いの事、よく知らないでしょ?」
「え、あ・・・・・・」
町に!?
一緒に!?
「嫌?」
「いえいえいえいえいえいえいえいえ喜んで!!」
「よかった」
クスクスと笑うさん。
う・・・・・・恥ずかしい所見られた。
にしても、さんホント可愛いなぁ。
「これからよろしくね、加藤君」
「よろしく、さん」



昔誰かが言っていた言葉。



ちょっと勇気を出すだけで、いい事が訪れるんだよ。



これは本当のことなのかもしれない。











「団蔵大丈夫かなぁ」
「大丈夫だろ」
「うまくやってるって。きっと」
「とうかわざわざ部屋から出てあげたんだからうまくいってなかったら許さない」
「うわー、ブラック庄ちゃんだー怖ーい」
「ま、何とかなるんじゃないかなぁ」
「きりちゃん、さんってどんな人なの?」
「んー、結構引っ張るタイプかも。案外さんが団蔵のこと町に誘ったりして」
「あー、団蔵のことだからあり得るかも」
「ナメクジは好きかなぁ」
「それは知らない」