ドリーム小説
高校に入学してから一カ月がたった。
つまり今の家に越してから一カ月がたったというわけだ。
元々小学校を卒業するまで私はこの町に住んでいた。
私は親の仕事の都合で引っ越し、この町にある中学校とは違う中学校に私は通っていた。
そして中学三年のある日、親の仕事の都合でまた私は引っ越すことになった。
小学校までずっと住んでいたこの町に、だ。
両親はそろそろ家が欲しいという希望と、私が転校ばかりで可哀そうだからという理由でこの町に一軒家を建てた。
確かにもう転校しなくて済むというのは有り難いが、私は高校生だ。
たとえ再び引っ越して家から学校までの距離が長く通学時間が長くなるとしても、小中学校と違って公共交通機関を使って通うことができる。
できれば小学生の時に家を建ててもらいたかった。
そうすれば、私は彼と離れることはなかった。
まぁ、今頃言い出したって過去に戻れるわけでもないし、戻ることができたとしても、子どもの私にはどうすることもできない。
それに、私よりも転校が多い子だって世の中にはたくさんいる。
私はまだいい方なんだから。





高校は家から歩いて行ける所を選んだ。
小学校から仲がよく、今でも連絡を取り合っている友達数名は全員他の高校だ。
これといって特別親しかった人はいないが、名前と顔は覚えている人は何人かいる。
「あ、さん戻ってきたんだー」
「うん、そうなんだー」
そのくらいの会話しかせず、私は新しくできた友達と一緒に行動している。





それと、一人、仲がよかった人物がこの学校にいる。
仲がよかった、と過去形なので、今現在は仲がよくない。
よくないというよりは、関わりがない、と言った方が正しい。

立花仙蔵。

それが仲がよかった人―――――幼馴染の名前。
幼馴染といっても、転校してからは連絡を一切取っていないので彼との関係を聞かれた時に幼馴染だと答えてもいいのか疑問だ。
だけど、彼との関係を聞かれるような事などないだろうから、そんな事を考えても時間の無駄というわけだ。
だって今ではもう彼と私の関係は幼馴染ではくてクラスメイトなんだから。
彼はどう思っているか知らないが(というか話しかけたことない)、私は幼馴染ではなく、ただのクラスメイトだと思っている。
しかも、まったくといってもいいほど関わりのないクラスメイト。
必要最小限の事しか話さないただのクラスメイト。
そう、私達はただのクラスメイト。
今まで連絡を取らなかったんだ。
いや、取ってくれなかったんだ。





私は学期が変わる毎に彼に手紙を書いた。
でも彼からは一回も返事が届いたことはなかった。
自分で言うのも何だが、私と彼は本当に仲がよかった。
だから私は彼からすぐに返事が来るだろうと思っていた。
だけどどんなに待っても彼から返事は来ることはなかった。





高校に入ると、彼がいた。
彼はものすごく身長が伸びていて、そしてとても綺麗な顔立ちになっていた。
もともと整った顔立ちだったが、三年間でさらに整っていた。
彼は私に気付いた。
私の事を見て、一瞬驚いたような顔をして、私に話しかけようと口を開いて、口を閉ざして目をそらした。
その行動を見て私は感じた。

もう幼馴染ではないんだ、と。

たとえ手紙の返事が来なくても、私は幼馴染だと思っていた。
だけど、彼はそう思っていなかった。
私の事を幼馴染だとまだ思っていてくれていたなら彼はきっと私に話しかけてきてくれていただろう。
彼はそれをしなかった。
そして一カ月たった今でも、彼は私に話しかけてこない。
それは私も同じだ。
私は彼に話しかけていない。
だってもう私達は幼馴染じゃないんでしょ?
ただのクラスメイトでしょ?
用もないのに何でわざわざ話しかけないといけないの?
「久しぶりだね」って言うべきなの?
いいえ私は絶対に言わない。
三年間手紙の返事をしなかった彼になぜ話しかけないといけないの?





さよなら、私の幼馴染。





さよなら





さよなら 私の初恋の人。