ドリーム小説




「―――――っ」



彼は私の質問に一瞬体を強張らせて、そして、ドアを閉める。



「それは・・・・・・」



彼はさっきまで座っていた所に座り、私を見て、言った。



「ただ、自惚れていただけだ。が私の事を好きなのではないか、と」



彼は言った。
私が彼の事を好きなんじゃないか、と。
彼の言う事は正しい。
好きだった。
でもそれは過去形。
今でも私は彼の事が好きだろう。
だけど、もう彼との関係は終わるの。
だからもう、好きではないの。



「私は昔からの事が好きだった。勿論その気持ちは今でも変わらない。
 だから、から一通目の手紙が届いた時は本当に嬉しかった」



彼はどこか遠い目をして話をする。
昔を、思い出しているかのように。



「好きな人からの手紙だ。舞い上がらないわけがない。
 私は毎日なんて返事を書けばいいのか悩んだ。
 そうしているうちにから二通目の手紙が届いた」



ああ、そう言えば私は彼から返事が来なくてショックを受けていたっけ。
でもきっと忙しくて返事が書けなかったんだろうって思って二通目を書いた。
彼の事が好きだったから二通目を書いたんだ。



「私はまた悩み始めた。何と返事を書けばいいのか、と。
 そうしているうちに一通、また一通とから手紙が届いた。
 愚かだった私は―――――いや、今も愚かな私は思った。
 一度も返事を書いていないのに手紙を送ってくるのは、私の事を好きだからではないだろうか、と」



何度手紙を送っても返ってこない返事。
彼は私の事が嫌いなんだ。
いつしか私はそう思うようになった。
でも、彼に手紙を書くことを私はやめなかった。
やめたくなかった。
彼との関係が途切れてしまうのではないかと恐れたから。



「こっちに戻ってくると書いてあった手紙を見た時は嬉しさで死ねるのではないかと思った。
 それくらい、の事が好きだった」



あの手紙を書いた時の私は淡い期待を抱いてたっけ。
彼と昔のように話す事ができるんじゃないかって。



「高校に入学した時は驚いた。まさか同じ高校だと思ってもいなかったからな。
 勿論私は話しかけようとした。
 だが、思った。一度も返事を書かなかったのに話しかける権利があるのだろうか、と。
 そう思ったら、話しかけることができなかった」



「・・・・・・だから、目をそらしたんだ」
「・・・・・・・・ああ」
「それで私が傷つかないとでも思ったの?」
「・・・・・・すまん」
「帰って」
「・・・・・・・・・・ああ」



彼はゆっくりと立ち上がる。



「その前に、一ついいか」
「・・・・・・・・・・何」



もう何も話したくない。
でも、もっと話をしたい。
本当にイライラする。
矛盾している自分に。



「なぜ、手紙をくれた。返事を来ないのに、なぜ」



きまっているじゃない。



そんなの





「仙蔵の事が、好きだから」





言おうなんて思ってもいなかった言葉が勝手に出てくる。



「好きなの。昔から仙蔵の事が好きなの。
 だから返事が来なくても私は手紙を書いた」



言いたくない。
言いたくないのに溢れてくる言葉。

好き。

好き。



「好きなの、仙蔵の事が」



止まらない口。
止まらない涙。
止まらない感情。



「好き。昔から・・・・・・・・え?」



突然、彼に抱きしめられる。



「・・・・せん、ぞう?」
「両想いだったのなら、もっと早くに告白しとけばよかったな」
「うん・・・・・・お互い、不器用だったんだよ」
「ああ、そうだろうな」
「仙蔵」
「ん?」
「好き」
「ああ、好きだ」





互いに何度も言い合い、自分の気持ちを伝える。



ああ、もっと早くに言っていればどんなによかったか。



好き



好き



きっと、これからもずっと