ドリーム小説
もう教室になんか行きたくなくて、私は家に帰った。
泣いて真っ赤になった目をお母さんが見て、一瞬驚いたような顔をしたが、その事については何も触れなかった。
ただ一言、学校には気分が悪いから家に帰りましたって連絡するね、と。
その言葉は今の私にはとてもありがたく、でも感謝の言葉を述べられるほどの余裕はなくて、私は「うん」と一言お母さんに向けて言い、私の部屋に向かった。
部屋に入るとすぐに私はベッドにダイブした。
制服がしわになるのも構わず、だ。
私は枕を抱きしめて、泣いた。
声を殺して、でも結局は殺しきれずに泣いた。
枕が涙でぐしょぐしょになって濡れた枕カバーが顔に張り付いて気持ち悪い。
でも私は泣くことをやめることはしなかった。





思い浮かぶのは彼の事。
幼かった頃に一緒に遊んだこと。
一緒に喧嘩したこと。
一緒に仲直りしたこと。
一緒に泣いたこと。
一緒に笑ったこと。
一緒に
一緒に
一緒に

そしてどんな思い出よりも鮮明に浮かんでくる彼。
私が彼に向って関わらないでと言った時の彼。
戸惑った様な、傷ついたような、悲しそうな、そんな表情。
どうして?
どうしてそんな顔をするの?
あなたは手紙の返事をくれなかった。
それは要するに私と縁を切りたかったんでしょ?
私ともう関わりたくなかったんでしょ?
私を、突き放したじゃない。
だから私は彼に関わりたくないと言った。
私から彼を突き放した。
なのになんで。





今の私はその行動をものすごく後悔している。





何かが動く気配がして私は目を開けた。
ああ、いつの間にか眠っていたらしい。
窓から差し込まれる光はオレンジ色を帯びていて、時刻が夕方だという事を教えてくれる。
泣きながら眠ったせいか、瞼が腫れぼったいし、体全体がだるい。
顔、洗おう。
ゆっくりと起き上がり、ベッドから足をおろす。
と、目には言った物が一つ。
いや、“物”じゃない。
人だ。
目に入った人が、一人。





「ひどい顔だな」





彼は―――――立花仙蔵は私の顔を見て少し笑い、言った。