ドリーム小説 「大変大変!!」
くのたま六年の教室に駆け込んでくる女子生徒。
「どうしたの?」
「りりりりり利吉さんが来てるの!!」
「本当!?」
「行こう行こう!!」
「どうしよう、私の今日の髪いまいちなのに・・・・・・」
「わー、ドキドキしてきた!!」
山田先生の息子、山田利吉が来たそうだ。
山田利吉といえば、売れっ子のフリー忍者。
その容姿でくのたまのアイドル的存在。
六年にもなれば、異性に興味を持つのは当たり前。
きゃいきゃいと騒ぐ仲間たちをぼんやりと眺めて、空を見る。
も行こうよー」
一人が私に言う。
「いや、いいよ私は。早く行きなよ。いなくなっちゃうよ」
「そうだね!!」
「じゃ、留守番よろしくー!!」
黄色い声を上げながら走っていく。
私は皆の声がしなくなったのを確認してから天井を見た。
「おーい、いつまでそこにいるつもり?」
呼びかけると、天井の板一枚が音を立てて外れる。
「なんだ。わかってたのか」
現れたのは、先ほどまで話題になっていた山田利吉。
「だって気配消してなかったでしょ」
「早くに気付いてほしかったからな」
「皆が気づいたらどうするのよ」
「その時はその時だ」
「はいはい」
利吉はストンと降りてきて、私の隣に腰掛ける。
「こうやって隠れて会うの、早く終わればいいのにな」
「私が卒業するまで待っててね」
「ああ」
本当は、今すぐにでも利吉が私の恋人ですと皆に自慢したい。
でも、利吉は皆にもてもてだし、なによりこの学園の先生の息子だから皆に言うのをためらう。

「ん?」
「卒業したら、私のそばにいてくれるのか?」
何度も受けた質問。
「当たり前でしょ?」
その質問に返すのはいつもと同じ言葉。
「ありがとう」
そっと、手を握ってくる。
「卒業したら、いろんな人に報告しないとな」
「そうね」
はやく
はやく時間が過ぎていけばいいのに。
卒業まであと少し。
今まで長い時間耐え続けていた。
でも、そのあと少しが長い。
はやく、はやく。
堂々と彼の隣に立ちたい。
彼とともに歩きたい。
時間が、もどかしい。
はやく
はやく
はやく